横井小楠の幕末

幕末の歴史 幕府への登用 士道忘却事件 国是七条
龍馬の訪問 参勤交代制廃止 「攘夷三策」
国是七条(小楠)から船中八策(龍馬)・五箇条の御誓文(由利)へ

国是七条

1.大将軍上洛して列世の無礼を謝せ。
1.諸侯の参勤を止めて述職となせ。
1.諸侯の室家を帰せ。
1.外様・譜代にかぎらず賢をえらびて政官となせ。
1.大いに言路をひらき天下とともに公共の政をなせ。
1.海軍をおこし兵威を強くせよ。
1.相対交易をやめ官交易となせ。

1.大将軍上洛して列世の無礼を謝せ。

将軍は、京へ行き、これまでの徳川家中心の政治を、朝廷に謝る。

小楠は、徳川幕閣政治を、徳川家のための「私」の政治である、これを、「公共の政」に改めるべきである。と主張した。「私」の政治を、「公共の政」に変えるために、先ず、これまでの「私」の政治を、天下に謝るべきである。このために、将軍は京へ赴き朝廷に謝るべきとした。

1.諸侯の参勤を止めて述職となせ。

参勤交代制をやめて、各大名は、将軍に各藩の情況を報告する制度に改める。

参勤交代制は、徳川幕閣政治を維持するための中核であったが、幕末になると制度疲労を起こし、各藩にとっては財政的な負担が大きく、松平春嶽をはじめ各大名より、改革の声が出始めていた。小楠は、「私」の政治の象徴としての参勤交代を廃止し、大名の役割を、「述職」とすることで、「公共の政」へ政治の体制を変革を図った。また、参勤交代に費やす莫大な費用を、外国から国土を守るための財源とすることとした。

(広辞苑より)
じゅっ‐しょく【述職】
[孟子梁恵王下] 諸侯が天子に謁して職事の状況を報告すること。朝覲(チヨウキン)。

1.諸侯の室家を帰せ。

各大名の奥方を、江戸へ常駐させず、各藩へ帰す。

大名の奥方は、いわば人質のようにして、江戸常駐が義務づけられていた。これも、「私」の政治を守る制度であり、その為の維持費の負担も、各藩にとっては莫大なものであった。参勤交代制同様に、この制度の変革を図った。

1.外様・譜代にかぎらず賢をえらびて政官となせ。

政治を司る地位には、これまでの伝統にこだわらず、優秀な人材の登用を行う。

徳川幕閣政治は、徳川家のまわりの人々によって政治が行われてきた。外国から条約の締結を要求される時代には、徳川家を守るという事を第一義に考える政治は通用しない。これまでの慣例にとらわれず、優秀な人材を登用することで、「私」の政治から「公共の政」へ改める事によって、諸外国との交易も行えるとした。

1.大いに言路をひらき天下とともに公共の政をなせ。

密室で、一部の地位の人だけで決めていく政治を改め、多くの人々の意見を集約する政治を行う。

徳川幕閣政治は、一部の地位の人々による専制政治であった。「日米和親条約」にしても、井伊大老を中心に、徳川幕閣政治を守るにはしかたがないという考えで、一部の人々の意見のみで、条約締結を行った。小楠は、国の大事な方針は、諸大名を集めて議論をし、皆の納得の上で決めていくべきだ、とした。徳川家の「私」の政治から、「公共の政」への転換。徳川家の「専制政治」から、「共和政治」への転換を図った。

1.海軍をおこし兵威を強くせよ。

外国の侵攻を防ぎ、日本を守るには海軍の増強が必要。

米・露・英などの国がアジアへ押し寄せ、インド・中国を支配下に置き、日本に対しても、一方的な条件で国交の要求をしてきている中で、国を守るには、海軍の増強が必要であるとした。しかし、徳川幕府のみでは海軍を増強するための財政力はないために、各藩との協力してその体制を作る必要があるとした。

1.相対交易をやめ官交易となせ。

外国との貿易を、国の管理下に置き、国の財政基盤を強化する。

外国のいいなりになる、自由貿易はせずに、貿易は当面は国の管理下に置くべきだとした。越前藩では、藩の管理下での貿易「物産総会所」で、藩が莫大な利益を得た。これを手本とし、国も貿易を管理下に置き利益を得ることで、海軍増強の費用の捻出を行うこととした。